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銀行から展示施設へ

ホワイエ風景(左)金庫室を利用したイコン展示室入口 (右)磁器の絵柄を採用した壁面 イコン展示室風景

 親和アートギャラリーは、佐世保市に本店を構える親和銀行が所蔵する美術品の常設展示施設として平成24年4月に開館しました。収蔵品は昭和20?50年代に収集・収蔵されたものです。
 収集活動は、終戦後の混乱期に地方の優れた文化財が国内外へ散逸していく現状を危惧したことに端を発し、著名な画家や作家の作品、歴史的価値のある美術品などもその対象となっていきました。これらは長年、本店別館に収蔵していましたが、ほとんど一般公開していなかったため、その存在はあまり知られていなかったと言えます。
 市中心部に位置する、旧銀行店舗の1階を全面的に改装した館内には、絵画、陶磁器、イコン(聖像)を展示する6つの展示室と、彫刻を展示しているホワイエがあります。限られたスペースに、異なる国、時代、技法による作品を展示しているため、各展示室では展示作品に合わせた空間構成を行っています。
 この内、季節展示室と絵画展示室1では、3ヶ月に一度、絵画作品の展示替えを行っており、現在は長崎をテーマにした「秋季展示(9月?11月)」を開催しています。二代歌川広重の「諸国名所百景 肥前長崎の津」と、“長崎くんち”の演し物の一つとして人気のある「阿蘭陀万歳」を描いた絵画展として朝比奈文雄の大作を始め、鈴木信太郎、旭達文、清水崑の作品4点を展示しています。この「季節展示」は開館以来行ってきたものですが、昨年度と今年度は夏休み企画として、他館との共同企画を同室の会場提供によって開催する新たな試みも行っています。
 本格的な美術品の収蔵開始から60余年、市内でも数少ない常設展示施設(鑑賞無料)として、広く一般の方に鑑賞の機会を提供してきました。今後は、未公開作品の紹介など収蔵品を活かした企画も検討しており、収蔵品の保存・調査活動が欠かすことのできない職務となります。先人より受け継いだ貴重な収蔵品を、よりよい状態で後世へ受け継いでいく必要性をスタッフ一同、強く感じています。


 美術作品の鑑賞体験は、時に特別な出合いを個人にもたらすことがあります。お気に入りの作品に出合える、地域の暮らしに身近なギャラリーとして、多くの方にご利用いただけることを願っています。

親和アートギャラリー 学芸員 藤松綾子