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原の辻遺跡出土品一括資料1670点 国重要文化財新指定へ

原の辻遺跡出土品代表資料一括

平成25年6月19日付の官報告示を受けて、新たに壱岐市にある国特別史跡原の辻遺跡から出土した資料が国重要文化財に新指定されました。原の辻遺跡は、日本を代表する弥生時代の大規模環濠集落跡で、これまでの発掘調査において東アジアとの交流を物語る貴重な資料が数多く発見されています。10万点以上ある資料を精査し、東アジアとの交流と『魏志』倭人伝に記された一支国の王都を裏付ける資料1670点を選定しました。新指定された資料は、土器・土製品だけなく、木器・木製品、石器・石製品、ガラス製品、金属製品、骨角器・骨角製品など多岐にわたります。豊富な種類の資料もまた、対外交流の拠点として栄えた原の辻ならではの特徴といえます。

原の辻遺跡出土品一括資料の国重要文化財指定は、壱岐島では6例目、弥生時代の弥生集落遺跡一括指定としては西日本初の事例として国内外から注目されています。現在、壱岐市立一支国博物館で開催中の「国重要文化財新指定記念 原の辻遺跡の全貌展」は、今回新指定された1670点の中から選りすぐりの資料を展示し、新指定のPRとこれまでの発掘調査で解明された原の辻集落の様相をひも解く展覧会です。日本唯一の人面石を筆頭に、国内最古のココヤシの実を楽器に加工した椰子笛、棹ばかりの錘として使われた青銅製の権、自動式の弩に用いる矢の先に取り付ける三翼鏃、1遺跡としては国内最多の出土量を誇る銅鏃など新たに指定された国重要文化財を一斉に公開する貴重な機会となっています。

展示では、ただ新たに指定された資料を陳列するだけでなく、土器形式の変化を見比べながら時代の変遷をひも解いていくことができる内容となっており、それぞれの時期において、原の辻の集落がどのように栄え、東アジアの中でどのような役割を果たしていたのかなど考古学ファンならずとも興味・関心が持てるような展示構成となっています。

展示では、限られた道具そして限られた材料を使ってつくられた木器・木製品は芸術品ともいえるような仕上がりとなっており、高度な技術を持っていたことがわかります。他にも海に囲まれた環境ならではの漁撈具の豊富さや東アジアとの交流を裏付ける搬入品など全国各地の弥生集落遺跡の中でも原の辻ならではの資料に注目です。企画展示を通じて、原の辻遺跡のすごさだけでなく、弥生時代における技術の高さや弥生人魂をビンビン感じとってください。

 また、新たな試みとして、壱岐市立一支国博物館以外に、長崎歴史文化博物館にて「国重要文化財新指定記念 海の王都・原の辻展」を平成25年10月16日(水)から開催します。新指定された原の辻遺跡の国重要文化財資料を長崎まで運び行うデリバリーミュージアムです。壱岐同様、原の辻遺跡の全貌について知ることができるような展示構成を予定しております。佐賀県吉野ヶ里遺跡公園で平成25年9月21日より開催される特別企画展「倭人伝の道? よみがえる邪馬台国 ?倭人、海峡をわたる?」に一支国を構成する原の辻遺跡、カラカミ遺跡、車出遺跡群の壱岐島の弥生3大遺跡の重要資料を出展しています。

長崎県内はもちろん、県を越えたミュージアム連携を実現することで、一支国博物館はもちろん壱岐のことを多くの人に知ってもらう“きっかけづくり”と考えております。そのスタートともいえるデリバリーミュージアムを長崎歴史文化博物館で実施できるようになったことに感謝するとともに、今後も他館との連携を深めていくことでさらなる壱岐の魅力の情報発信を県全体に広げていくことを目指し、“ミュージアム県ながさき”の実現に向けて取り組んでいきたいと思っております。

壱岐市立一支国博物館 学芸員 松見 裕二